【ボルダリングで保持力が落ちる原因は前腕だけじゃない?肩甲骨・体幹・重心から考える「保持力」】
2026/08/28
ボルダリングをしていて、
「最近、すぐ前腕がパンパンになる」
「保持力が弱くてホールドを持ち切れない」
「カチは持てるけど、悪いホールドになると急に弱い」
「トレーニングしているのに保持力がなかなか上がらない」
こんな悩みを感じたことはありませんか?
ボルダリングでホールドを保持するためには、もちろん指や前腕の筋力が重要です。
しかし、実際のクライミング動作を考えてみると、保持力は「指の力」だけで決まっているわけではありません。
肩関節や肩甲骨の安定性、体幹の使い方、足でどれだけ身体を支えられているか、そしてホールドに対して身体の重心をどこに置いているか。
これらが組み合わさることで、最終的に指へ加わる負担が決まります。
つまり、
「ホールドが持てない=指が弱い」
とは限らないのです。
今回は豊川市のふうりん接骨院が、ボルダリングにおける「保持力」を、指・前腕だけではなく、肩甲骨・体幹・重心・力学という視点から詳しく解説していきます。
■そもそもボルダリングの「保持力」とは?
クライマーの間では「保持力」という言葉がよく使われます。
一般的には、
ホールドをつかんだ状態を維持する能力
を意味することが多いでしょう。
しかし、実際にはかなり複雑です。
ホールドを持つためには、指を曲げる筋肉だけではなく、
・指関節を安定させる
・手首を適切な角度に保つ
・肘を安定させる
・肩関節を安定させる
・肩甲骨を安定させる
・体幹を安定させる
・足で身体を支える
・重心位置をコントロールする
といった働きが同時に必要になります。
そのため、保持力を単純な「握力」として考えると、実際のクライミングで起きている現象を説明しきれません。
■握力が強くてもホールドを持てないことがある
握力計の数字が大きい人が、必ずボルダリングで強いわけではありません。
逆に、身体が細く握力も特別強そうに見えないクライマーが、非常に悪いホールドを余裕を持って保持していることもあります。
なぜでしょうか?
大きな違いの一つが、
「ホールドにどれだけ余計な力を加えているか」
です。
上手なクライマーほど、必要な場面では強く保持しますが、常に100%の力でホールドを握っているわけではありません。
足、腰、体幹、肩甲骨などを利用して、指に集中する負担をできるだけ減らしています。
一方、身体全体をうまく使えないと、身体を壁に保持する仕事の多くを腕と指が担当することになります。
その結果、
「すぐパンプする」
という状態につながります。
指がパンプする仕組み
ボルダリングをしていると、前腕が張ってきて「もう持てない」という状態になることがあります。
いわゆるパンプです。
ホールドを強く保持すると、前腕にある指を曲げる筋肉が強く収縮します。
代表的なのが、
・浅指屈筋
・深指屈筋
などです。
これらの筋肉が強く、そして長時間働き続けると、筋肉内部の血流が制限されやすくなります。
そこへ連続して次のムーブを行えば、前腕の疲労はさらに進みます。
つまり重要なのは、
「どれだけ強く持てるか」だけでなく、「どれだけ弱い力で登れるか」
ということです。
■保持力を考えるなら「肩甲骨」が重要
指から少し離れて、肩を考えてみましょう。
ホールドをつかんだ腕は、
指
↓
手首
↓
前腕
↓
肘
↓
上腕
↓
肩関節
↓
肩甲骨
↓
胸郭
↓
体幹
というように身体へつながっています。
つまり指は単独で働いているわけではありません。
特に重要なのが肩甲骨です。
肩甲骨は腕と体幹をつなぐ重要な土台になります。
例えばホールドを右手で保持しているとします。
このとき肩甲骨周囲が安定していなければ、肩関節周辺も不安定になりやすくなります。
すると身体は、その不安定さを補うために他の部位を過剰に緊張させることがあります。
結果として、
肩に力が入る
↓
肘にも力が入る
↓
前腕も力む
↓
ホールドを必要以上に握る
という状態になりやすくなります。
■「肩が上がるクライマー」はなぜ疲れやすい?
登っているときに、
肩が耳の方向へ上がってしまう
人は少なくありません。
もちろんムーブによって肩甲骨を挙上させる場面はあります。
「肩を下げればいい」という単純な話ではありません。
重要なのは、
ムーブに応じて肩甲骨を適切にコントロールできるか
ということです。
常に肩をすくめたような状態で保持している場合、首から肩周囲の筋肉が過剰に働きやすくなります。
すると肩甲骨周囲の筋肉を効率よく使いにくくなり、腕全体に余計な力が入りやすくなります。
■クライミングで重要な前鋸筋
肩甲骨の安定に関係する筋肉の一つが前鋸筋です。
前鋸筋は肋骨から肩甲骨へ付着し、肩甲骨を胸郭上でコントロールする重要な筋肉です。
クライミングでは腕を上げた状態で身体を支える場面が非常に多いため、肩甲骨が胸郭上で適切に動けることが重要になります。
前鋸筋がうまく機能しない場合、肩甲骨が不安定になり、
「腕だけでぶら下がっている」
ような状態になりやすくなります。
その結果、肩関節や肘、前腕などへの負担が増える可能性があります。
■広背筋も保持に関係する
クライマーにとって非常に重要な筋肉の一つが広背筋です。
広背筋は腕から体幹へつながる大きな筋肉です。
ホールドを引きつける際、
「腕で引く」
というより、
腕を通して身体全体をホールドへ近づける
ような感覚が重要になります。
広背筋を含めた体幹との連動がうまくいけば、肘を曲げる筋肉だけに負担を集中させずに身体を保持しやすくなります。
■ローテーターカフと肩の安定
肩関節は非常に大きな可動域を持っています。
その反面、安定性を筋肉に依存する部分も大きい関節です。
そこで重要になるのが、
・棘上筋
・棘下筋
・小円筋
・肩甲下筋
から構成される**ローテーターカフ(回旋筋腱板)**です。
これらは上腕骨頭を肩関節内で安定させる働きに関係します。
クライミングでは、
デッドポイント
ランジ
ロック
クロスムーブ
ガストン
など、さまざまな方向から肩に力が加わります。
肩関節が安定していなければ、その先にある肘・前腕・手指も効率よく力を発揮しにくくなります。
■保持力と「体幹」の関係
次に体幹です。
ここが今回の記事の大きなポイントです。
例えば右手でホールドを持っているとします。
足がしっかりホールドに乗っていて、骨盤と胸郭が安定していれば、身体の重さを足へ分散できます。
しかし体幹が安定せず、
腰が壁から離れる
↓
お尻が落ちる
↓
身体が壁から離れる
という状態になるとどうでしょうか?
腕への負担が増えます。
■なぜ壁から離れると保持がキツくなるのか?
ここは力学的に考えると分かりやすくなります。
身体には重力が働いています。
重力は身体の重心に対して作用します。
そしてホールドを持っている手や、足を置いている場所が身体を支える「支持点」になります。
身体の重心が壁から遠くなると、支持点から重力の作用線までの距離が大きくなります。
すると回転させようとする力、
モーメント(トルク)
が大きくなります。
基本的には、
モーメント = 力 × 支点からの距離
として考えることができます。
体重が同じでも、身体が壁から離れるほど「距離」が大きくなるため、身体を壁から引き離そうとする回転作用も大きくなります。
その力に抵抗するために、腕や指がより大きな力を発揮しなければならなくなります。
■「壁に近づけ」は単なる根性論ではない!
クライミングでは、
「腰を壁に近づけて!」
と言われることがあります。
もちろんすべてのムーブで壁に近づけばいいわけではありません。
あえて身体を離した方が動きやすいムーブもあります。
しかし、
同じホールドを保持するだけなら、重心と壁との距離を小さくできることで、腕への負担を減らせる場合があります。
これは感覚的な話だけではなく、力学的にも説明できます。
■足が切れると急にホールドが持てなくなる理由
クライマーなら経験したことがあると思います。
両足がホールドに乗っているときは余裕だったのに、
「足が切れた瞬間に落ちた」
という経験です。
これは当然です。
足がホールドに乗っているとき、身体の重量の一部を下肢で支えることができます。
しかし足が切れると、身体を支える負担が一気に上半身へ移ります。
それまで、
手+足
で支えていた身体を、
ほぼ手だけ
で支えなければならなくなるからです。
さらに足が切れることで身体が振られると、静的な体重だけではなく動的な負荷も加わります。
だから、
「足が切れない技術」そのものが保持力を高める
とも考えられるのです。
■強いクライマーほど「足で持っている」
一見すると、上級クライマーはものすごい指の力だけで登っているように見えます。
もちろん高いフィンガーストレングスを持つ人は多いでしょう。
しかし上手な人ほど、
・つま先への荷重
・ヒールフック
・トウフック
・スメアリング
・フラッギング
・ドロップニー
・腰の位置
・重心移動
などを使い、手への負担を減らしています。
つまり、
手で持ちながら、足でも持っている
のです。
■「体軸」が崩れると保持にも影響する
クライミングでは左右非対称な姿勢が非常に多くなります。
右手と左足で支えたり、片足だけで立ったり、身体を捻った状態から次のホールドへ手を伸ばしたりします。
このとき重要なのが、
身体の各部位がどのようにつながって力を伝えているか
です。
身体の軸が大きく崩れると、
重心を支持面内にコントロールしにくくなる
↓
身体が壁から離れる
↓
腕への負担が増える
↓
指で強く保持する必要が出る
という流れが起こることがあります。
そのため、保持力を考える場合でも、手だけを見るのではなく、
足 → 骨盤 → 体幹 → 肩甲骨 → 腕 → 指
という力の伝わり方を見ることが重要です。
■「指が弱い」と決めつける前に確認したいこと
保持できないと、
「フィンガーボードをやらなきゃ」
と考えるクライマーも多いと思います。
もちろんフィンガーボードなどのトレーニングが必要なケースもあります。
しかし、その前に確認してほしいポイントがあります。
① 足に体重を乗せられているか
登っている最中に、常に腕で身体を引き上げていませんか?
足で床を押すようにホールドへ荷重できると、腕への負担を減らせる可能性があります。
② 腰が必要以上に壁から離れていないか
特に傾斜壁では重要です。
腰が落ちると重心が壁から離れ、上半身への負担が増えやすくなります。
③ 肩に力が入りすぎていないか
ホールドを持った瞬間、
「ギュッ!」
と肩まで力んでいないでしょうか?
必要以上の共同収縮はエネルギー消費を増やします。
④ 呼吸が止まっていないか
悪いホールドを持つと、無意識に息を止める人がいます。
呼吸を止めた方が瞬間的に体幹を固めやすい場面もありますが、長時間それを続けると疲労につながります。
ムーブに応じた呼吸も重要です。
⑤ 足が切れやすくないか
保持力不足に感じていても、実際には足の使い方が原因で腕への負担が増えているケースがあります。
特に傾斜壁では、足を残す能力が非常に重要になります。
■カチ持ちと保持力
カチ持ちは、指関節を曲げた状態でホールドを保持する方法です。
小さいエッジなどで強い保持力を発揮しやすい反面、指関節や腱、腱鞘、プーリーなどへの負担にも注意が必要です。
カチが得意だからといって、すべてのホールドをカチで処理すると、局所的な負担が増えることがあります。
重要なのは、
必要な場面で必要な持ち方を選択できること
です。
■オープンハンド
オープンハンドでは指を比較的伸ばした状態で保持します。
スローパーや丸みのあるホールドなどでは、接触面積や摩擦を利用することが重要になります。
ここでは単純な指の屈曲力だけではなく、
・手首の角度
・肩の位置
・身体の方向
・重心位置
・ホールドに加える力の方向
などが大きく関係します。
■ピンチ
ピンチでは親指と他の指でホールドを挟みます。
この場合も、単純な握力だけではありません。
身体がホールドから離れれば、ピンチに要求される力も大きくなります。
反対に身体の位置を調整し、ホールドに対して効率よく力を加えられれば、同じピンチでも保持しやすくなることがあります。
■スローパーこそ「身体全体で持つ」
スローパーは保持力の考え方が非常に分かりやすいホールドです。
エッジが少ないため、指を引っ掛けることができません。
そのため、
摩擦力
をうまく利用する必要があります。
摩擦力は大まかに、
摩擦力 = 摩擦係数 × 垂直抗力
として考えられます。
つまり、ホールドに対して適切な方向へ力を加えられるかどうかが非常に重要になります。
身体の位置が悪ければ、どれだけ握ろうとしても滑ります。
逆に、
足の位置
腰の位置
肩の位置
手首の角度
がうまく合えば、驚くほど軽い力で保持できることがあります。
スローパーが得意なクライマーは、
「強く握っている」というより「力の方向を合わせている」
とも考えられます。
■保持力を高めるなら「最大出力」と「効率」を分けて考える
保持力を伸ばしたい場合、大きく二つに分けて考えると分かりやすくなります。
一つは、
最大保持力そのものを上げること。
もう一つは、
同じ保持力で身体を支えるために必要な力を減らすこと。
例えば最大保持力が100ある人が、ある課題で80の力を使っているとします。
これをトレーニングによって最大120まで伸ばす方法もあります。
一方で技術や身体の使い方を改善し、その課題で必要な力を60に下げる方法もあります。
実際のクライミングでは、
両方が重要です。
■「もっと強くなる」だけではなく「もっと楽に登る」
ボルダリングというと、
筋力を上げる
保持力を上げる
懸垂回数を増やす
など、「出せる力を増やす」方向へ目が向きやすくなります。
しかしもう一つ大切なのが、
必要な力を減らす能力
です。
これはクライミング技術そのものとも言えます。
同じ課題でも、
初心者は100の力で登り、
上級者は60の力で登れる。
そんなことは珍しくありません。
身体の使い方が変われば、同じ筋力でも登りやすさは大きく変わります。
■すぐ前腕がパンプする人は「全身」を確認してみよう
もし、
「自分は保持力が弱い」
と思っているなら、一度登っている姿を動画で撮影してみてください。
確認するポイントは、
・肩が常に上がっていないか
・肘をずっと曲げていないか
・腰が壁から大きく離れていないか
・足に体重が乗っているか
・足が頻繁に切れていないか
・次のホールドへ行く前に身体の位置を作れているか
・ホールドを必要以上に強く握っていないか
です。
自分では「指が弱い」と思っていても、動画を見ると、
「ずっと腕で登っていた」
ということもあります。
■保持力は「指から足まで」の総合力
ここまで読んでいただくと、
ボルダリングの保持力は単純な握力ではない
ということが分かると思います。
もちろん指の筋力は重要です。
しかし、その指が発揮する力を支えているのは、
手首
肘
肩
肩甲骨
胸郭
体幹
骨盤
股関節
膝
足首
足部
と続く身体全体です。
どこか一か所だけを見るのではなく、
身体全体で一つの運動として考える
ことが重要です。
■豊川市でボルダリング・クライミングによる身体のお悩みなら
ふうりん接骨院では、痛みが出ている場所だけを見るのではなく、
「なぜその場所へ負担が集中したのか?」
という点を大切にしています。
例えば指や肘に負担が出ていても、
肩甲骨の動き
肩関節の可動性
胸郭の動き
体幹の安定性
股関節の動き
重心移動
などが関係している可能性があります。
特にボルダリングは、一般的な日常生活ではほとんど行わない姿勢や動作を繰り返すスポーツです。
そのため、クライミング特有の身体の使い方まで考えることが重要だと考えています。
「前腕がすぐパンプする」
「以前より保持しにくくなった」
「指や肘、肩に違和感がある」
「もっと効率よく身体を使って登りたい」
そんなクライマーの方は、一度自分の身体の使い方を見直してみてください。
■まとめ|「保持力=指の力」ではない
ボルダリングにおける保持力を考えるとき、指や前腕の筋力は非常に重要です。
しかし、
保持力=握力
ではありません。
肩甲骨が安定し、体幹から腕へ効率よく力が伝わり、足でしっかり身体を支え、重心を適切な位置へ移動できれば、指へ集中する負担を減らすことができます。
反対に、身体が壁から離れ、足へ荷重できず、肩や腕が力んでしまえば、十分な指の筋力があっても前腕は早く疲れてしまいます。
だからこそ、保持力を高めたいクライマーに覚えておいてほしいのは、
「指を強くする」だけではなく、「指に頼らなくても登れる身体の使い方を作る」こと。
最大保持力を高めるトレーニングと、必要な保持力を減らす技術。
この両方を伸ばしていくことが、ボルダリングのパフォーマンス向上につながります。
「もっと強く持つ」だけではなく、
「もっと少ない力で持つ」。
保持力に伸び悩んでいる方は、ぜひ一度この視点から自分の登りを見直してみてください。
■ふうりん接骨院|豊川市
スポーツによる身体のお悩みから、ボルダリング・クライミング特有の身体の負担まで、一人ひとりの動きに合わせて身体の状態を確認しています。
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ふうりん接骨院
住所:愛知県豊川市小坂井町大堀38−1
モデスト コザカイ 102
電話番号:0533-95-0192
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